バイデン時代のトルコ

トルコ大使時代からの友人のムラット・メルジャン駐日トルコ大使が間もなく駐米大使としてワシントンに赴く。先任のクルチ駐米トルコ大使も駐日大使だった。(因みに駐日パキスタン大使だったアサド・マジッド・カーン大使もワシントンに赴任した。)メルジャン大使は元々AKP創設時からの政治家だが、外交委員長を務めたり大の外交好きだ。人好きの好々爺で、大変な親日家だ。こういう人がワシントンに行くのは心強い。政治家が駐米大使になるのは初めてなので、やっかみも随分あるようだが、チャヴシュオール外相が、在外大使でNo1はメルジャン大使だと公言してくれている。日本赴任前はエルドアン大統領とシリアを巡り対立したが、同大統領の数回の訪日中の奉公が実を結んだようだ。S400,シリア、ギュレンと米国と対立する難しい局面での赴任だけに、本人のアドレナリンも上がっている。だがバイデン新政権はトルコには冷ややかだ。韓国の文在寅もバイデン電話を心待ちにして漸く先日溜飲を下げたが、エルドアン、チャヴシュオールへのラブコールは未だない。米国との関係は経済に直接影響がある。リラの乱高下は正にその証左だ。最近エルドアンはトルコの未来はヨーロッパだ、とか反米レトリックは控えているがサッタ―フィールド駐トルコ米国大使は「トルコは世界の中でも一番の反米の国」と公言しており両国関係の将来はメルジャン大使にとって頭痛の種だろう。エルドアンはトルコ建国100年を2023年に控え、トルコ国家中興の祖として歴史に名を刻むことを目標としており、そのため世俗の、三権分立を謳う現行憲法改正も視野に入れている。オスマン帝国への郷愁に明け暮れるエルドアン政権が、AI・SNS時代の世界に対応していけるのか、ポスト・コロナの群雄割拠の中でのエルドアンの指導力が試されている。

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