トルコ中興の祖、エルドアン , Dynasty restorer

28日のトルコ大統領選挙でエルドアンがほぼ4~5%差で再選された。これは18日の第一回目の投票と特に変わらない。右から左までの幅広い支持層に支えられたクルチュダオールが、クルドに接近しすぎて離脱したオーアン候補やアシュケネールIYI党首支持のナショナリストの離反を招き、HDPからのクルド支持票と相殺したような結果となった。

思った通り、エルドアンはそう簡単に負けない。TBS1730でも述べたが、エルドアンには政権20年の重みがあり、その間に社会のありとあらゆる部門にAKP`シンパを潜り込ませてきたので、これを動員すれば若年層とか無党派層のクルチュダオール支持も帳消しにできると思っていた。クルチュダオールが敗戦の弁で言及したのもこの点だ。エルドアンは国のすべての手足を動員して、日本とか民主主義国家ではありえないような選挙妨害等も繰り広げながら、クルチュダオールを抑え込んだというのが実態だろう。

今回の選挙は国の経済がガタガタであり、そこに巨大地震への稚拙な対応があって政権交代に結びつくのではとの淡い期待が内外から聞こえた。然しながら、民主主義体制の下では強権的指導者を倒すのに必要なのエネルギーはこの二つの要因からでは足りないという事実が浮かび上がる。

ソ連の崩壊も、アラブの春も、20年以上の強権化で、経済低迷、人権蹂躙がトルコ以上に進んでこそ革命とかでの政権交代が実現したのであろう。トルコではジャーナリストやギュレン関係者が万の単位で拘束はされつつも、彼らは未だ牢獄で生きている。生活が40%を超すインフレの中で困窮してきたとはいえ、世俗派の下でもこれしきの経済的困窮は何度も起きた。それよりなにより、アタテュルク革命以来80年間の世俗派支配の下で抑圧されてきた、国民の大多数を占めるイスラム教信奉者がAKPの下で信仰の自由を獲得し、又安価な住宅供給と国民保健・医療体制の整備で生活の基盤が安定したことが、エルドアンへの確固たる支持につながったと言えよう。民主主義国では余り見られないが、トルコ国民は経済の悪化を批判するよりは生活の安定を選んだと言う事だろう。

この結果、エルドアンは益々権威主義を高めるであろう。その結果は周辺の権威主義国家への安心材料となろう。欧米はこれへの批判を強めよう。しかし彼らも本音はエルドアンが勝ったことに安堵しているのではないか?何と言ってもEUにトルコが加入する蓋然性は一層減った。難民もトルコがせき止めてくれる。エネルギーもカスピ海の石油天然ガスの安定供給の道は一応確保されたのだから。こういう事で困るのはいつでもそこの国民である。

建国100年の節目にエルドアンは望み通り、トルコ復興の中興の祖となった。

彼の行く手を阻む者は死神以外はいない。

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