2026年は矢張り波乱の幕開けとなった。トランプ政権のヴェネズエラ侵攻と国家元首の拉致で米国の帝国主義的野望が露呈した。以前から思っていたが、矢張り米国は統治の発展段階が西欧諸国とは異なり、遅れている。未だ西部開拓史の名残が色濃く残った世界なのだ。一部エリートは啓蒙思想の影響を多大に受け、世界の民主主義の担い手であったが、それは米国が世界で最も豊かで強い国であり、余裕があったらからこそ可能であった。しかし米本土の敗戦を知らない米国は自ずと慢心、傲慢になり、無敵だと信ずるようになる。政教分離も殆ど経験なく、ユダヤ教のような独善的な福音派は人口の4割を占め、明日が見えなくなれば、敵を作り敵意を向ける。
加えて制度的に米国は三権分立とはいえ、大統領の行政権が矢鱈と強い。大統領令は仮処分付きだが行政権の範囲で何でもできる。ラテンアメリカの諸国は米国を手本に大統領制度を導入した。米国で三権分立のチェックアンドバランスが曲がりにも働いてきたのは、啓蒙思想の下で育った一部エリート、殆どがアングロ・サクソンだが、生来の衡平概念を働かせてきたからこそ、民主主義の手本と言われてきた。米国に倣った制度を持ったラテンアメリカで独裁政治に傾斜していったのは、その出身母体が欧州のラテン文化の下の人たちで衡平の概念に馴染みのない人々が制度運用したからバランスが崩れたと思う。しかし、その米国で、トランプのような不動産屋が全権を握ることまでは初代大統領のワシントンも想定していなかっただろう。米国の統治制度はトップに来るのがどういう人物かで大きく振れることが明白になった。
これに対し、西欧諸国では啓蒙思想、宗教改革を経て、自由、法の支配が確立されてきており、又、王政が多く存在することもあって、概ね権力機構内でのチェックアンドバランスが(革命を経たフランスは少々例外)存在し、統治の形態が大きく振れることはない。英国のように法律がなくとも衡平概念から統治がうまくいってきた。(フランスは啓蒙思想、政教分離の徹底で救われている)。要は、西欧諸国は統治の仕方においてかなり進んでいるのである。又、幾多の戦争を繰り返し、敗戦も経験して成熟した社会を築き上げた。
問題は、西欧諸国は其の植民地主義下で版土拡大の結果、多数の異民族との共存を余儀なくされた。そして啓蒙思想の発祥の地だとの自意識過剰、驕りと、他方で異民族への贖罪意識が重なり、近年のグローバル化の中、移民問題で苦しむ結果となった。国連はその理想主義を体現し作られたが、全く歴史体験が西欧と異なる国々が混在した結果、機能不全に陥っている。
戦後80年は曲がりなりにも、米国のエリートと英仏という統治概念において先進的な国々が先導して、倫理性が高まり、法の支配、人権、自由、等々国連憲章にある諸価値が、人類普遍の価値として尊ばれてきた。
21世紀に入り、余りに急速なグローバル化、SNSに見られる大衆の意思決定への参加、金融工学の発達、国境の開放による主権国家の制約、先進国での格差の急拡大(中間層の没落)等の結果としてトランプと言う怪物が出現し、Pax Americana を葬り去った。
今後の世界は、17世紀Pax Westphalica の下で形成され、20世紀国連憲章で集大成された主権国家の平等、人権尊重、内政不干渉等々の長らく普遍的価値と呼ばれてきたものが少しずつ蝕まれていく弱肉強食の時代に入っていくだろう。
トランプには哲学はない。が、この世界は米中露印と言った大国が仕切り、他の弱小国は其の影響力の下で処していくべしとの考えがあるようだ。これ等の国々は、言わばスーパー・ジェネコンの下で下請け、孫請けをすれば良いという、「土建屋」の発想である。
1980年代に読んだ本で、今後の世界は米国圏、中華圏、欧州・中東圏に三分割されていくだろうというものがあったが、その予言通りになっている。
その中で日本は以下に処すべきか?
日本は中華圏に在りながらその辿った歴史は封建制度を経験したとの点で西欧に近く、中国大陸の絶対王朝の歴史と異なる。従って明治以来常に「アジアであり、アジアでない」状態が続いた。これは梅棹教授の言うとおりである。従って自然の味方は殆どいない。
となると、意図的に友達サークルを作っていくことがまず重要だ。米国は日本の生殺与奪の権を握っているから日米同盟を、米国からそれを反故にしない限り続けていくべきで、トランプ追随も仕方ない。かといって米国一辺倒であってはならない。国連憲章の諸価値を真に共有する西欧、加、豪州NZと補完的な準同盟を構築する必要がある。その外枠に比、さらにその外に印辺りが来るだろう。ASEANもそこに全体として入れていったらいい。この視点は既に既存の政策の延長線にある。
国連も日本にとっては重要であり価値はある。然しそれを補完する多国間の連携、出来れば安全保障面まで及ぶ連携、を上記の諸国間で構築する努力をすべきであろう。CPTPPは経済面でのその努力の一環であり重要だ。何といっても日本は貿易立国である。
同時にあと2つ挙げておきたい。
一つは国防であり、中露朝と言った核保有国が日本を脅かす場合、彼らにとっての日本の価値と同程度の打撃と損害を彼らに与えうる能力を保有する必要がある。言わばド・ゴール戦略の日本版を構築する必要がある。これに核兵器の保有は必要ないのではなかろうか。核保有にはNPT脱退、対日制裁等々大きな障害が多々あり、一害あって百利なし、である。それよりも日本列島をミサイル一万発でハリネズミ化して抑止力を持つことが重要だ。核弾頭の代わりに日本の技術で威力が桁違いの弾頭を開発すればよい。(尤もいざとなればプルトニウムの余剰もある)。
もう一つは、中露朝との対話である。いかなる時も対話を閉ざすべきでない。問題は、取り分け中朝は対話そのものを対日の武器として使い、話し合いに応じないことである。これをいかに打破するかが至近の課題である。
中国との間では台湾問題が喫緊の問題だが、「日本は「一つの中国」政策を堅持し、台湾問題は中国の内政問題であるとの中国の立場を理解し、尊重する」と明示的に再確認しても害はない。(1998年に合意)。トランプ・習近平会談で必ずやトランプが譲歩するであろう台湾問題について、日本が見す見す梯子を外される必要はない。これをもって対中対話の糸口にしたらどうか?
対北朝鮮は、トランプが米朝再会談があれば、大陸間弾道ミサイル制限で手打ちをするだろう。日本にとり北朝鮮を核保有国と認めることはいとましいが、印パキとの間も同じ問題がある。米国が朝鮮半島への関心が薄れることは好ましくないが、トランプ説得が失敗する折に日本が危惧すべきは南北和解での日本の孤立である。其のため極力韓国と同一歩調で臨む必要がある。
ロシアについては、先ずは欧州との共同歩調が重要で、(その見返りが台湾問題であるかどうかは分からないが)、対ロ関係改善の折に北方領土問題を再度積極的に持ち出すことは止めた方が良い。安倍総理の対ロ譲歩で既成事実は作られてしまった。従って4島は日本領と言い続けていれば良く、交渉の必要は将来世代に先送りするしかない。
いずれにしても、日本の国力を強化することが先決であり、少子化と生産性向上にまい進するしかない。今また、「追いつき、追い越せ」の時代がやってきた。
