11月7日ユイサル中央銀行総裁が解任され、アーバル戦略・予算局長に交代したのも束の間、翌8日にはエルドアンの女婿で権力を欲しいままにしていたアルバイラック財務大臣が辞め、エルバン元開発相に変わった。アルバイラックはエルドアン一家の重鎮ゆえ、エルドアン大統領と運命を共にすると見られていたので、突然の辞任は御用プレスも半日以上報道を控えていたほどだ。エルドアンの経済運営を体現してきたアルバイラックは、その知見も、手腕も市場からは徹底的に叩かれ、訪米中も米財界には極めて不評であったが、トランプの女婿のクシュナーとの結びつきから辛うじてトランプ系のハルク銀行を使ってトルコ経済を支えてきた。経済常識に反する低金利、準備金売却で凌ぐエルドアン経済は、一国の経済を一家計の如く扱っていると批判されて久しく、リラ安、インフレ、経常赤字の垂れ流しを招いてきた。1320億ドルに上る(8月)対外短期債務の内650億ドルは非金融系会社が抱えており、トルコ・リラが10%下がれば480億リラの負債が増加する苦境に陥っている。エルドアン・アルバイラックは企業心理の問題だけだと嘯いてきたが、実体経済は立ち行かない。ここに来てS400ミサイル問題の米国の制裁も加わり、トルコ経済は崩落しつつある。この段階でのアルバイラックの辞任は、従来路線からの転換と受け止められよう。11月19日に開催予定の中銀の理事会が注目される。エルドアンがアルバイラックを切らざるを得なかったのはAKPの中に反アルバイラック勢力が増大しつつあり、アルバイラックが財務相に止まるならAKPの離党も辞さないと言っている議員が30-40人ほどもいることが決定的要因となった。彼らはAksenerのGood Party, Ali Babacan 前副首相率いるDEVA, ダヴトール前首相率いるFuture PartyといったAKPからの脱党派が率いる政党への鞍替えを予定していたと報じられる。これはエルドアン政権の手綱の緩みの反映であり、エルドアン政権の終焉が加速されているのかもしれない。